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2005年9月27日 (火)

俺を殺すCM

 最近、気になるCMを見た。

 それは東京ディズニーシーのCMだ。それはこんな内容である。ある家族がディズニーシーで遊ぶスナップ何枚かと、ゆったりとした音楽をバックに女性のナレーションが入る。

”アトラクションに子供のようにはしゃぐパパ。こんな時間を必要としてたのは貴方かもしれないね。東京ディズニーシー”というような内容だ。

 私はそのCMを見て固まってしまった。理由は2つある。一つは私がディズニーシーが好きなことだ。

 ディズニーシー開園後、ディズニーランドには2回しか行っていないが、ディズニーシーには10回以上行っている。(もっとも開園以前はランドには行ったことがなかったが。)おそらく、ディズニーリピーター、特に10回以上行っている人は逆(ランド10回、シー2回)の人が半数以上ではないかと思う。

なぜ、ディズニーシーがすきなのか。1)ランドは混んでいてイヤだ。2)飯がシーの方が上手い。3)奥さんがディズニー好きで影響受けた。4)実は結婚式をミラコスタでやった。などがある。

さて、もう一つの理由。それはナレーションの声の女性にある。

声の女性は女優の奥貫薫、その人である。CM中のスナップにもママ役で出ている。奥貫薫はかつてはアイドルグループでデビューし、今は脇役が多いが30代の可愛らしさを表現できて、結構いろいろな映画やドラマに出ている人気女優である。

私は数年前に「竜二 Forever」(高橋克典主演)の映画に出ていた奥貫薫を見てから気に入ってしまい、以降、奥貫薫の出るドラマなどは見るようになった。そういや「渡る世間は鬼ばかり」にも出てたっけ。

本題に戻るが、私はCMが始まってすぐに声の主が奥貫薫とわかった。その奥貫薫が”こんな時間を必要としてたのは貴方かもしれないね。”と夫に向かっていうのである。ディズニーシー好きの夫である私に向かってだ。

これは私を殺すのに十分なインパクトがあった。奥貫薫が言うのである。奥貫薫がだ。

”ディズニーシーに行きたいっ、死ぬほど行きたいっ”と心の中で、ディズニー好きの俺と奥貫好きの俺がもがいている。行ったって奥貫薫に会えるわけではないのだが。

とまあ、私のどストライクを突いたCMは以降も何度も見ることになったが、そのたびに見入ってしまう私でした。

しかしながら、そのCMは私を殺すには出てくるのが少しばかり遅すぎた。

なぜなら、CMでの奥貫に負けない妻が、私にディズニーシーの年パスを買おうと提案し、CM放送前の段階で、家族でいつでもシーに行けることになったからである。年パスを持っていなかったら多分、行きたい行きたいと自分に念じ続けただろう。だが年パスがあればいつでも行ける。というわけで、先日も楽しんできたのでした。

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第1章 1997年 2.開幕戦(2)

 13時キックオフ、今シーズンが始まった。

 ユウタロウが太鼓のリズムを打ち始める。イングランドのサンダーランドというクラブのチームソングを流用したテンポの早い威勢のいい曲で最初は入る。当たり前のことだが90分の試合の中で緩急がある。ずっと跳ねるような曲ばかりはできない。

 セキネから早い曲ばかりだと選手もそのリズムに乗ってしまい、スタミナ配分を狂わすこともあると言われたので、早い曲は試合開始5~10分までとか、試合の流れが一度切れてリスタートするときとか、流れがこっちにあって選手も積極的に勝負しているときとかと決めている。それ以外は試合の速度に合わせて曲を選んでいる。

 相手のペースのときはゆっくりとした曲にして相手の攻撃をそのリズムに乗せようと意図することもある。あえて曲を止めて“待つ”こともある。これはもう経験と勘でしかない。全部俺が決めている。ユウタロウには手振りで指示を出している。手を回したり、こぶしを開いたり閉じたりといった動作で殆ど伝わる。

 試合は比較的ミクニ優勢ながら、ゆったりとしたペースで進んでいた。

 20分過ぎ、敵陣でFKを得る。キッカーはアソウ。ゴール前に上げたボールにクゲが頭で合わせる。シュートはGKの正面に飛び、弾かれてゴール前にこぼれた。そのボールをハヤシバラがスライディングで押し込む。

先制!1-0!歓声が沸き上がる。

 その後もミクニ優勢で試合は進んだ。チャンスは再三あったが、力んでしまうのかシュートが枠へ飛ばない。結局1-0で前半を終了した。

 

 ハーフタイム。俺はユウタロウと太鼓のペースについて確認する。

「最後の方、テンポが早くなってたぞ。あがり過ぎないように気をつけてくれ。」

「わかりました。気をつけます。後半開始はどうしますか。」

「試合のテンポを見よう。追加点が取れなかったから嫌な展開になってる。歌のテンポ早くすると前掛かりに拍車をかけちゃうかもしれないし。」

「最後の方、少し選手疲れてましたからテンポ変えた方がいいかもしれないですね。」

フィールドでは、サブメンバーがアップをしていた。マルセーロが俺に気づいて手を振る。俺も挨拶を返す。せっかくだからとユウタロウにマルセーロコールをやってもらう。

外国人は些細なことでモチベーションが上がりも下がりもするので、こういったコミュニケーションは大事なのだ。

 

 選手達がでてきて、ほどなく後半が始まった。

 相手は戦い方を変えてきた。前半は後ろに引いて守備を固めていたが、後半開始から中盤での積極的なプレッシングを仕掛けてきた。ボールを奪うと素早く攻撃に転じる。後方からのボールを持った選手を追い抜いていく動きが増え、ミクニは対処に振り回されてしまう。ペナルティエリアへは侵入させないものの、フリーでミドルシュートを何本も打たれる。

 1本は左隅の枠内に飛び、カワシマが片手で弾いて危機を救った。

「声掛け合えー!落ち着いて一度守備確認しろー!」俺は選手達に向かってまるで監督にでもなったようなことを叫んでいた。それでも俺自身は焦っているわけではなく、ただ流れが向こうにはあるが、まだこっちがリードしているという感覚で試合を見ていた。

 後半15分過ぎ、やっと相手のペースが落ちてきて、ミクニの選手たちも落ち着きを取り戻す。

 ファビーニョはここで新人のカタヤナギを投入する。右も左もこなせて、スピードもあるアタッカーとのことだった。

 そのカタヤナギがいきなり魅せる。左サイドに入り、最初のプレーで対面の相手を抜き去り、鋭いクロスを入れる。セキネが頭で合わせるがクロスバーの上。

 続けざまに今度はドリブルでDF2人を交わしシュートを放つ。わずかにゴールを逸れた。

 

 流れは完全にミクニに戻った。35分、ついにマルセーロがセキネと交代で入る。マルセーロは最初のプレイでDFに1対1の勝負を挑み強引に抜きにかかった。が1度目は相手に上手く体を入れられボールを奪われてしう。

 再度勝負。今度は体を使って相手をブロックしながら抜く途中で強引にシュート。弾道は大きく枠をそれる。気負い過ぎなのか強引さが目立つ。結局、有効なプレーはなかった。試合はこのまま1-0で終了。開幕戦を白星で飾った。

 試合後、選手達を駐車場にて待つ。JFLのいいところは試合後、選手達に直接話しができることだ。こういう時にいい関係を築けると本音を言ってくれるようになる。それは俺達にとって応援することの大きなモチベーションになる。女の子達とは違った意味で俺達にとっても試合後は勝負の時間なのだ。

 セキネの奥さんがいたので軽く挨拶を交わす。しばらくしてセキネがやってきた。

「良くなかったね。フィニッシュの精度悪かったし、個人プレーが多くてチームとして機能してなかった。」と不満そうな顔でセキネは言った。

俺達も同じ感想。

「これから良くしていこう。まだ開幕だから」と俺。

「うん。それに怖いのはケガだからね。」といってセキネは奥さんと帰っていく。

セキネは試合後いつも本音を言ってくれる。セキネは俺達とって誇りだ。

女の子達は目当ての選手達に話しかけたり写真を撮ったりに夢中になっている。俺は強引に割って入り、カタヤナギやアソウに試合について話を訊く。アソウもセキネと同じことを言っていた。”序盤戦、苦しいかも”と。俺は軽い不安を感じた。とはいえ開幕戦勝利は大事なことだ。内容はともかく3人で祝う価値のある勝利だろう。

 俺はユウタロウとケイタに“今日は奢る。”と告げた。ユウタロウがマメのつぶれた右手に絆創膏を張りながら笑った。

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2005年9月21日 (水)

鈴木チェアマンの愛媛FC来期J加入困難との発言について

愛媛FCの来期J加入が困難な状況となっています。

「条件を細かく整えるより、夢のあることをしてほしい。要件を満たせば、昇格させるものでもない」と長期的なビジョンを求めています。夢のある話ともおっしゃってました。

愛媛側では条件のかさ上げと怒っているとも聞きます。去年指摘された箇所をクリアしたと思えば、それも当然かなとも思います。

しかし、チェアマンがこうも言っています。「我々の仕事は免許を与えることが仕事ではない」と。

私はこの意味を「Jリーグに参入することは会社としてJリーグのサッカー振興の事業に参画することが本質であり、上位リーグに参戦することだけではない。」と取りました。

「最低限クリアするだけではダメ」というのは、愛媛のサッカー振興や、Jリーグの一員として日本全国のサッカー振興のために愛媛として長期的計画や発想、斬新なアイディアはないのですかと訊いているのだと思います。

その点が愛媛に欠けているのではないでしょうか。

「言われたことをやるだけではだめ。自分からもっと改善できる余地や方法はないか考えなさい。」と私は仕事で言われたことが何回かあります。言われたことだけやってOKなら、それこそ免許ですよね。

ですから、Jリーグという事業を発展させるためのビジョンやサッカー振興に掛ける熱意をアピールすることの方が予算を用意したり、計画書出し直すより有効なのではないでしょうか。

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2005年9月19日 (月)

第1章 1997年 2.開幕戦(1)

 俺は目覚まし時計が鳴るより早く起きられる特技がある。余程早い時間じゃないかぎり大丈夫だ。ユウタロウはというと全く逆。ほっておくと9時まで寝ていたりするので、たいてい俺が“悪魔のモーニングコール”を入れることになる。 俺は朝飯を食いながらユウタロウに電話を掛ける。12回目のコールで電話に出た。

「もしもし、ユウタロウ?いつまでも寝てないで起きろ。もう6時だぞ。」今は本当は7時だ。あえてサバを読んで言う。

「ウあい。もふろふじでうか(“はい、もう6時ですか”らしい)」

意味不明なユウタロウ「早く起きろ。遅刻したら破門だぞ。」

と言って電話を切った。

3月最後の日曜日、今日は開幕戦だ。

 

 俺は愛車の古いトヨタ車に荷物を積んで出発する。オーディオからジョニークラッシュの“Axe to the Wax”が威勢よく流れだす。試合の日はいつも気持ちが高めるためこの曲を掛けながら出発するようにしている。戦闘モードへのスイッチ代わりだ。

 

 俺達のホームスタジアム、南総総合球技場は町の中心から山あいへ25分程車で走ったところにある。周りに人家はないので太鼓を叩いてもクレームはこない。そういう意味ではありがたいが交通の便が悪く、近くにバスは通るが基本的には車を持っていないとかなり行きにくい場所だ。だから子供は親同伴じゃないと来ないし、学生の客はもっと来ない。“聖地”と呼びたいところだが、人が来ないので本当に聖地っぽくてシャレにならないっていうのが現状だ。だからいつも観客は7~800人ほどしか来ない。

 ケイタは既に来ていた。ユウタロウも俺に遅れて15分程で来る。

「すいません。遅れました。」

いかにも寝起きといったユウタロウ。

「なんだその頭。」

と俺はユウタロウの寝癖で反り返った髪を見てケイタと笑う。

俺は弾幕の確認と太鼓のチューニングについて2人と確認する。

「開幕戦だしテンションを高くできるように太鼓のチューニングを高めに設定しよう。」

「はい、わかりました。テンポはどうします。」

「テンポは普段通りで行こう。展開によって少し早くする。それはお前が試合中にバランス取ってくれ。」太鼓に関してはユウタロウの感性に結構任せている。それだけ太鼓のセンスには信頼している。

 

 俺達クルセイドは3人だけだが他にもゴール裏に何人かやってくる時がある。大概女の子のグループだ。

 若い子は結構積極的に応援に参加してくれるが、座っているだけの女性達もいる。当然格好も応援するような服装ではこない。せめてチームカラーの青が入っていれば救われるが、敵のチームカラーで決めてくる人もいる。理由を聞くと“最近買ったお気に入りの服で○○クン(選手のこと)に見てもらいたかった。”と平然と答えたりする時のあり、勘弁してくれと思うこともしょっちゅうだ。

 結局彼女たちの本当の目的は、試合よりも試合後に選手を出待ちして自分をアピールすることのようだ。俺は理解できないが、ユウタロウだけはこういう女性たちとも何のわだかまりなく会話ができる。

 

 メインスタンドのお客さんはほとんどの人が座って静かに見ていたいという人たちだ。俺達はメインスタンドで応援していた時期もあり、かつては応援のレクチャーをしたこともあったが、煙たがられることが多く、人は来ないが応援に集中できるゴール裏へ移ってきた。ゴール裏といっても芝生席で傾斜がきつく、ずっと立っているのはつらい。でもここでやることに、今、俺達はプライドを持っている。

 とまあこんな具合で俺達の置かれている状況というのは悩ましいことだらけだ。解決する見込みもない。でもチームのために俺達は応援を続ける。チームのためにやるという気持ちがあるからだ。

JFLの場合、開場は試合開始1時間前が多い。ウチもそうだ。今日も12時に開門。横断幕15枚、旗1本、太鼓1個。これが俺達の装備に全てだ。手分けして横断幕を張り終えるころには30分が過ぎてしまう。15分前にスタメンの発表があるので、手際よくやらないといけない。

今日の注目は何といってもマルセーロだろう。横断幕を張りながらケイタが尋ねる。

加入して2週間じゃスタメンは微妙なんじゃないですかね?」

「俺もそう思う。練習試合でもゴールはあげてないって聞いてるから、スタメンはセッキーとハヤシバラだと思うよ。」と俺。

そこへメグミが駆けてくる。いつもこの時間にスタメン表をくれることになっている。俺は受け取ったスタメン表を見て

「ケイタの言ったとおりだよ。」

とケイタに渡す。マルセーロはサブメンバー登録で、2トップはセキネとハヤシバラだった。システムは4-4-2、ボックス型つまり守備的MF2人の構成だ。

「ファビーニョが望んで獲った選手じゃないから、起用には消極的だと思うよ。もっとも同郷人だからチャンスは与えるだろうし、結果を出して監督の戦術も理解したら立場はガラッと変わるだろうけどね。」と俺は続けた。

今日の対戦相手のアゲハ電機は全員社員選手だ。昨年は2戦2勝したが、いづれも1点差と苦戦した相手で油断はできない。

  

30分前、選手達がアップのためにグラウンドに現れる。選手一人一人のコールを始める俺達。手を上げてくれる選手もいれば、無視する選手もいる。当然だがこういう時の態度によってその選手への人気や信頼度が変わる。マルセーロは手を上げてくれた。でもサポが少ないのに唖然としたに違いない。でもこんなこと言うのは手前ミソだし、口には出せないが、俺は自分達がサイコーのサポだと思っている。思っていたい...。

キックオフはもうすぐだ。

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気分はベルカンプ

先日の金曜から土曜まで札幌に出張でした。普段は出張はないのですが、先月も名古屋方面に出張と、最近出張が多いのです。

札幌ですから当然飛行機で行くことになります。乗るのはJALにしました。会社の人からよくJALにしたねえとか言われ、何のことかと思ったら最近のJALの不祥事が多いせいで、他の人はANAがあればANAというようにJALを避けていたとの事。私は何も考えずにJALにしてました。

と言いながら、実は私は潜在的な飛行機嫌いです。潜在的なというのはどういう意味かというと、普段飛行機に乗っていないときは忘れているのですが、飛行機に乗ったときに過去の嫌な思いを思い出して飛行機嫌いになるのです。そして今回もそうでした。

嫌な予感に囚われたのは飛行機が離陸する瞬間でした。滑走路を走り始めたとき、嫌な予感を覚え、心の中で飛行機嫌いの自分が「やっぱり飛行機は嫌いだ~。」と叫び、飛び立った直後から水平になるまでの間に起きる一瞬ガクンと機体が下がるときの無重力感(実はこれが飛行機嫌いの最大の原因)にゾクッとなって、札幌に着くまで憂鬱な時間を過ごしてしまいました。

サッカー選手で飛行機嫌いと言うとデニス・ベルカンプ(アーセナル)が有名です。ベルカンプがどういう理由で飛行機嫌いなのかわかりませんし、彼は正真正銘の飛行機嫌いで、潜在的飛行機嫌いの私とは違うのですが、私は札幌に着くまでの1時間、ベルカンプが飛行機嫌いなのが分かるなあと勝手に考えていたのでした。

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2005年9月13日 (火)

甲府戦感想

いやあ、よくぞ勝った..って、今さっき終わったばかりロッテ対オリックス。

あ、脱線しました。

え~と、甲府戦ですが、そんなに甲府が良かったとは思えないのですが、徳島は細かいミスが多くて自分のリズムにできていませんでしたね。それでも大事な局面で集中が高まればいいんですが、それができないので結局それができた甲府にやられちゃったと私には見えました。調子が悪くても結果だけはなんとかするってのは強いチームがみんな持ってるものです。この辺が力不足なとこの一つなんでしょうな。

これはすぐに解決しない問題です。だからそれこそ最初から集中力高く持って自分達から試合を作っていくことが必要です。但し、これを90分保つのは大変ですし、毎試合やるのはハッキリ言って不可能です。

徳島には今こそ言いたい。残り試合、まず結果を考える前に毎試合自分達から試合に入っていく姿勢を貫いてください。

先週末はひいきのチームが全部負けるという珍しいことも起きたので、なかなか試合のビデオ観る気分になれないので感想は1試合だけです。

さあ、インテル。CLだぞ。パレルモでの借りを返してくれ。

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2005年9月 8日 (木)

第1章 1997年 1.マルセーロの入団(2)

 突然目覚まし時計が鳴った。

 俺の隣で寝ていたメグミが跳ね起きて、足元に転がっていた下着を掴んでバスルームの方へ歩いていった。

「いけない。支度しなきゃ。」

「なんだよ。何かあるのかよ」寝起きの俺は不機嫌そうに言った。

「今日、マルセーロが来るのよ。知ってるでしょ。」と言い放ちバスルームの扉を閉めた。

 そういやそうだった。今日は記念すべき日だ。昨日の夜はメグミの家に泊まった。スケジュール表のお礼のためだ。だから今朝は眠い。試合の日はいつも早く起きられるのだが、今日はダメだ。

 シャワーを浴びたメグミが出てきて忙しく身支度を始める。俺はベッドの中から下着を探しだす。そしてバスルームへ向かう。シャワーを浴びて出てきたとき、メグミはもう出かけようとしていた。

「おい、一緒に行こうよ。乗せてってよ。」

「冗談でしょ。同伴出勤なんかみんなに見られたら、会社中でウワサになっちゃうわ。」と突き放し「鍵、ちゃんと掛けてってね。」メグミは冷たく言い放ち出かけていった。

 

 我がミクニサッカー部の練習場は市の郊外、本社と工場を兼ねた海に近い敷地の一角にある。門のところで身分証明書を見せ、入場許可申請の書類を提出すれば中に入れる。昨年のリーグ戦は5位で終了。得点ランク6位にセキネが入った。それ以外は特筆するべき記録はなかった。

 既に練習は始まっていた。マルセーロらしき男はまだいない。俺はセキネに軽くアイサツを交わした。

「いよいよだね。期待してるから。」

「頑張るよ。ケガしないようにせんとね」とセキネ。俺は選手と余計な会話はしない。苦手だし不要だ。セキネも大事なとこは見てくれている。

 俺は他にGKのカワシマ、DFのクゲとかと挨拶を交わす。このチームにはプロ契約選手もいる。カワシマやMFアソウ、DFサカザキなど7人がそうだ。

 監督のファビーニョが来たので話しかける。去年から監督をやっているブラジル人だ。ここに来る前は日本の某高校でコーチをしていたので日本語の会話に問題はない。だから、チームのこと、サッカーのことをいろいろ教えてもらおうと、俺は自分から積極的に話しかけるようにしてきた。今日はマルセーロのことを聞くべきだろう。

「ファビーニョ、マルセーロの使い方とかもう考えたの。」いつも会話はタメグチだ。

「いや、まだプレイを見ていないんだ。ビデオもないし。見てから考えるよ。」とファビーニョ。どうやらファビーニョの知らないところで獲得が決まったようだ。

「ファイトする気持ちがあって欲しいネ。それ大事。」

「そうだね。そういう選手であるといいね。今年もよろしく。」俺はファビーニョと握手を交わした。ファビーニョはグラウンドへ向かった。

 

 練習が始まって30分ほどで、ウワサのマルセーロらしき男がサトウ部長や通訳らしき男性とともに現れた。 長い後ろ髪、色黒い顔、インディオの血が入っているようだ。アルメイダを少し怖くしたような精悍な顔、背丈は180センチくらい。俺の好きなサモラーノに似てなくもない。今日はジャケット姿だ。練習には参加しないらしい。

 サトウ部長は練習を中断させて、選手・スタッフを呼んだ。そしてマルセーロの紹介を始めた。続いてキャプテンのセキネに始まり、選手一人一人を紹介していく、練習中にここまでやるところがサトウ部長らしい生真面目さとズレたところだ。

 メグミが紹介されたとき、マルセーロの表情が変わった。ニヤッと笑い、視線を上下に動かしてメグミをチェックしたのを俺は見逃さなかった。プチッとスイッチが入る俺。メグミもマルセーロの視線に気づき強張った笑顔になる。サトウ部長はファビーニョと軽く会話を交わす。そして練習が再開された。

 ふとサトウ部長が俺に気づき、マルセーロをこっちへ引っ張ってきた。

「やあ、タクマくん。これがマルセーロ。いい選手でしょう。マルセーロ、彼がサポーターのリーダーの菅野タクマくん。いつも応援してくれるんだよ。」ご機嫌のサトウ部長。マルセーロは通訳から俺のことを聞いてうなずく。握手を交わすが俺の目が笑っていないのに気づいたらしく怪訝そうな顔をした。

「よろしく。期待してるから。」と日本語の俺。向こうでメグミが心配そうに見ている。 

俺は「(メグミの方を指差し)アレ、(自分を指し)俺の(小指を立てる)オンナだから。手出したらコレ(首をカットするポーズ)だから。オーケー?」と忠告した。

 固まるサトウ部長と通訳。メグミが引きつった顔になっている。ファビーニョも選手達もこっちを見ている。

 マルセーロはキョトンとしていたが、一度メグミの方を見て俺の方に振り返り、

「オーッ、オーケー、オーケー。ダイジョブウ、ダイジョブウ。」

と手を上げて明るい笑顔で答えた。吊られてサトウ部長も引きつった顔で笑う。選手達はニヤニヤ笑っている。メグミは顔が真っ赤だ。

「まあ、これからもヨロシクね。」そう言って、サトウ部長はマルセーロを連れていく。マルセーロは俺の方を見て笑顔で手を振って去っていった。

 後で聞いた話だが、マルセーロは小さなクラブの有望な若手なのだが、クラブは選手への給与未払いが続いていて、このままだとマルセーロのパスも失いかけない状況だったらしい。そこでミクニが一時的に給料の肩代わりをする代わりに日本につれてきたらしい。会社も何か思索があってのことのようだ。

 

メグミがこっちを睨んでいる。気まずい俺は早々に帰ることにした。

 

週明け、会社中にこの日のことが伝わった。ロビーで受付業務をしているメグミは警備員のおじさんにまで冷やかされたと怒っていた。

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2005年9月 3日 (土)

第1章 1997年 1.マルセーロの入団(1)

最初に..

 この作品をオダジマトモヒコくんに捧げます。

 

 

 JFLサポーターの正月は3月だ。たまに4月になることもあるが..。

 開幕を1ヶ月前に控えた土曜日、俺はチームの初練習を見に行った。始動したばかりの今はコンディション調整が中心だ。だが本当の用事は別にある。俺はマネージャのメグミを見つけて声を掛けた。

「よっ!元気。もう発表になったでしょ。教えてくんない。」

「元気って..。メール毎日送ってきて言うことじゃないでしょ。わかってるから、練習終わるまで待ってよ。」メグミはうんざりしたように答えた。

 メグミとは2年前から付き合い始めた。きっかけはやはり応援だ。試合の行く先々で顔を合わせるし、チームの予定や選手の調子の話を訊くうちに親しくなった。最初はあくまで友達レベルだったが、試合のときの雑務を手伝ったりするうちに先に俺が惚れてしまい、ダメ元で“付き合ってくれ”と告白し、それから付き合い始めた。選手はマネージャと付き合ってはいけないことになっていたこととも俺に味方してくれた。肩ほどに伸びた髪と大きな目をしていて、実は身長は俺より少し高い。普段会社では受付業務をしている。付き合い始めたことがチームにばれた時は一部の選手にイヤミも言われた。

 今日、俺がここへ来た目的は1年の計を決める重要なこと、すなわちリーグ戦のスケジュールを教えてもらうためだ。これがわからないとサポーターってのは他に何も決められない。まず試合の日をカレンダー上でマークすることから1年が始まるといっていい。

 

 しばらくして練習が終わり、メグミが後片付けを済ませて、やっと俺のところへ来た。

「去年も言ったけど、本当はまだ関係者以外に教えちゃ行けないんだから誰にも言わないでね。サトウさんが大目に見てくれてるんだから、公式発表の1週間後までお願いね。」サトウさんとはサッカー部の部長さんのことだ。

「わかってますって、メグミ様。今度いろいろサービスしちゃうから。」

「じゃコレ。わかりやすいようにチェックしておいたから。」と1枚の紙をくれた。開くとJFLの今年のリーグ戦の日程と対戦カード、場所、時間が書かれていた。

「おお、開幕はアゲハ電機か..。あれ、7節のここってどこ?」俺はいろいろ質問をする。JFLはアマチュアチーム主体なので、試合会場もいろいろな事情でいろいろな場所でやることになる。アウェイなのにこっちの方が近い場所で試合することもある。

「うん?何?この欄外の予約日ってのは?」俺は余白に書かれた予約日といういくつかの日にちをを指して訊いた。連続しているものもあれば、そうでないものもある。

「それはアタシがタクマ君のスケジュールに予約を入れておく日よ。今のうちに抑えておくの。ホラ、試合と被ってないでしょ。ここは旅行連れてってね。」と日にちを指差す。

「(呆然)はぁ.....。」

「早く決めとかないと仲間付き合いとかで予定埋められちゃって、どこにも行けなくなっちゃうから。」と毅然と答えるメグミ。しっかりしている。2年も付き合っているからサポーターの習性を理解できてきたらしい。

「わかった、空けとくよ。旅行の行き先は自由に決めていいから。」

 メグミと別れ、練習場を出ようとしたときにサトウ部長と偶然出会った。軽く会釈して話しかける俺。

「どうっすか。今年のチームは?」

「うん。ここまでケガ人もいないし、調子もよさそうだし、今シーズンは期待してください。」と明るい声でハキハキとサトウ部長は答える。この人はいつもこういう口調で人と接している。ものすごく温厚な人で俺も好きだ。だがスポーツにはあまり興味がないらしい。以前、新聞のスポーツ欄を見ているか訊いたとき、「見ていない。」とはっきりと答えられてしまい唖然としたことがある。困ったもんだ。

「今日練習見ましたけど、セキネ調子良さそうですね。声も出てるし。」と俺も適当に合わせる。

「うん、調子いいでしょう。今年も応援よろしくお願いしますね。」サトウ部長はにっこり微笑んで歩いていこうとした。が急に思い出したように振り向き、

「そうそう、まだ内緒なんだけど、菅野君には教えてあげる。実はね、ブラジルから選手が来ることになったの。」と喋り始めた。

「ブラジル?」

「うん、うちが出資している向こうの会社がスポンサーやってるクラブの選手でね、ウチのサッカー部にプロ契約で移籍してくることになったの。」とサトウ部長は続けた。

「名前はね、マルセーロっていうの。」

俺はポカンとしながら聞いていた。外国人のプロ選手が来るということも企業のサッカー部にはピンとこない話だったが、それよりも補強の話をこうも簡単に部外者に話すサトウ部長にも唖然としていた。リーグ戦のスケジュール表どころの話ではない。田舎らしいというのか、アマチュアらしいというか。

マルセーロとかいう選手は2週間後に来日だそうだ。開幕にはぎりぎり間に合うかもしれない。おかげでいいモチベーション付けになった。

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2005年9月 1日 (木)

誰のための勝利か

昨日の仙台戦もっと記事になってるかなと思ったのですが、東京じゃJ2の試合を詳しくは報じてくれないね。チョッと前はどっかが一面になったりしたが..。

さて、私も似たような経験あるんで仙台サポーターの気持ちは理解できます。モノを投げたことを肯定するつもりはありませんが、投げたくなるの堪えられなかったんだろうなあ。でもはっきり言っていろいろ抗議行動やっても、それがチームの結果に結びつくことってないんだよね。やり損というか、選手と仲悪くするだけなんだよね。でも抗議せずにいられないってのも理解できます。モチロンモノぶつけちゃダメだけど。

コアサポは一生懸命応援するから、他のファンよりも勝利のために戦っているって自負あるわけですよ。でも負けちゃうとこんなに応援してるのに負けやがってとか、敵の前で恥かかせやがってとか思っちゃうときあるんですね。つまり勝ったときは俺達が勝たせた。負けると選手が俺達に恥をかかせたって考えちゃうんですね。だから、自分の経験からいうのもなんだけど、こういうこと起きると結局勝利って誰のためのものなんだろうって考えてしまいます。

チームへの愛あるからこそって言いたい人もいると思うけど、チームと気持ちを一つにできない状況を作っちゃったら、それこそ勝利に意味はないですよね。モノ投げちゃった人はそれなりに覚悟していたと思いたいですが、やったからには自分で責任はキチンととって欲しいです。

悪者として自分からスタジアムを永久に去ることになっても、それによって残った人とチームが気持ち一つにできて、それが明日の勝利に繋がるならいいというくらいの信念もって行動してくれたらカッコいいなあと思います。

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