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2005年11月25日 (金)

第1章 1997年 5.クルセイド横浜(1)

JFLのリーグ戦はナイターのできない競技場でのデーゲームが殆どのため、暑さが過ぎるまでの夏休みのような中断期間が存在する。リーグ戦は9月中旬まで1ヶ月半の休みに入った。我がミクニサッカー部は6勝5敗の7位で折り返した。

我々クルセイドのメンバーも試合の無い期間は仕事に集中しないといけない。なぜならアウェーの試合に行くために仕事で遊休を使ったので、その分を“夏休み”中に元を取らなくてはならない。

といっても俺の場合はまだいいほうだ。ケイタとユウタロウの仕事は土日がメインとも言える。だから実際はホームゲームに来るので精一杯だ。とてもアウェーまでは休みがなかなか取れない。

だから殆どのアウェーの応援は俺一人でやってきた。最初は恥ずかしさもあったが、一度やったらアウェーの一人応援は病みつきになった。一人で勝たせたという快感には堪えられないものがあった。

 

だが一人ではどうしても全部のアウェーは行けない。どうしても仕事や家に都合で行けないケースが出てくる。

そして不幸なことに後半戦最初の試合、アウェーでの“みちのくホイールズ”戦の日に出勤せざるを得なくなった。

 

俺が気にするのは応援なしでの戦績が良くないためだ。サポーター0人試合での過去3年の戦績は7勝16敗。ちなみに応援を始めた3年前はアウェーには全く行かなかった。そのせいかアウェーで負けてばかりいたので2年目からはアウェーにも行くようにした。それからはアウェーの戦績は良くなった(と信じている)。

俺たちが応援に行ったアウェーの戦績は過去2年で8勝5敗だ。

 

が、今回はしかたがない。勝ってくれるのを祈るしかない。俺は暗澹たる気分だったがチームを信じて吉報を待つことにした。

そんな中、試合の3日前に突然ヨシヤから電話があった。

「オマエんとこ、次のみちのく戦何人来るンだよ。」

「いや、誰も行けないよ。」俺はいきなり今一番訊かれたくない質問をされ、テンションが下がってしまった。

「なんだよ、それ。せっかく行くことにしたのに、オマエら誰も来ないの?行くのフツーだろ、フツー。」と電話口でヨシヤが文句を言った。俺は驚いて訊きかえした。

「行くってなんだよ。宮城行くのか?」

「行くよ。人も集めたンだよ。4人で行くことにした。」とあっさり言ってのけるヨシヤ。

「へっ..、4人も。人集めたってどういうことだよ。」

「俺もミクニ応援することにしたから。グループ作って試合に行くことにした。」

俺は何が何だか理解できなかった。

「何で急にグループ作って応援することにしたんだよ。お前応援してるチームあるだろ。」

「まあ、いろいろあってさ。いいじゃん。とにかくオマエら行かないなら俺達が応援やるから。太鼓も幕も用意してあるから。」と既にヨシヤはやる気満々になっていて、なぜミクニを応援することにしたのかの質問には答えなかった。

「いや..、まあ..、ありがたいというか、申し訳ないというか...。」

「まかせとけ。きっちり勝たせちゃるから。また電話するわ。」と電話が切れた。

俺は呆然としていたが、しばらくしてアウェー0人を防げそうだという気持ちより、試合に行けないことがさらに悔しく思えてきた。全く予想外の展開に戸惑いも隠せなかった。

“何なんだ、アイツ。”と俺は思った。

 

ヨシヤは“とうとう始めちゃったな。”と自分に話しかけていた。

 

なぜミクニの応援を始める気になったのか。

 

ヨシヤ自身やらなくてはいけない理由は無かったが、フジマ戦でタクマ達が猛烈な暑さの中、必死に応援をする姿をみたこと。ヨシヤ達に混じって応援したこと。試合後のユウタロウ達の泣く姿を見たことで、“俺も何かをしなくちゃイケナイ”という気になったのだった。

後日、冷静になってみて何もそこまでしなくてもと一度考えもしたが、タクマ達にサポーターたる者の何かを見たような気もしていた。人数が少ないからそう見えたのかなとも思ったが、既に何人かに声を掛け、人も集めていたし、自分のなかで気持ちが突き動かされてしまっていて止めることは考えられなかった。

 

ヨシヤはタクマの気持ちを考えると複雑だろうなと思った。単純に喜んでいるとは思っていないかもな、とも考えていた。自分達が行かない試合に他のヤツが行って応援する。その試合に勝たれたら、そいつの応援のおかげってことにもなるし。

「あのまま、電話切らなかったら、最後は“お願いします”って言ったかな。」と独り言を言った。

しばらくして“いや、言わないだろうな。”との考えに至り、小さな優越感をヨシヤは感じた。

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