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2012年3月23日 (金)

映画『太陽』を観ました。

狭間記事として、今日はこの間借りたビデオのことについて書こうと思います。
 
先日まで借りていたDVDがありました。
アレクサンドル・ソクーロフ監督作品の『太陽』(2005年)という映画です。
終戦直前から終戦後の数日間での昭和天皇の人間としての姿を描いた作品です。
題材が題材なだけに当初、日本での公開は難しいと言われていましたが2006年に公開されています。
 
主演はイッセー尾形。
他には佐野史郎が侍従長、桃井かおりが香淳皇后を演じています。
1945年の夏、宮城(つまり皇居のこと)の地下の防空壕で疎開した皇后や皇太子と離れ一人で過ごす昭和天皇。
御前会議では閣僚たちが交わす戦争の続行か終戦かの議論に悩み、好きな生物学の研究では生物について語りながらも次第に愛する国民の苦しみを力を込めて語り出し、眠りにつけば東京大空襲(爆撃機や爆弾が魚で描かれる)の悪夢にうなされていた。
そして終戦。
昭和天皇は占領軍の司令官マッカーサーに呼び出される。
「すべてはあなたの決断にかかっている」とマッカーサーに言われた天皇は悩み、そしてこう決断する。
「私は、神格を自ら返上する」
そして皇后が疎開先から帰ってくる。
 
私は子供の頃、テレビでだが昭和天皇の姿についての見ていた記憶がある。
子供心なので漠然ではあるが特別な人なんだなあと思ってみていた。
その昭和天皇の記憶と、この作品でイッセー尾形が演じる昭和天皇は実に絶妙な存在感がシンクロしている。
実際の昭和天皇がそんなクセを持っていた記憶はないが、口をパクパクさせるクセだったり、「あっそ」とか軽く返事をするクセだとか、人間的な仕草がすごく印象に残る。
難しい役を演じていながら、尾形は脚本からはみ出してアドリブを混ぜながら人間としての昭和天皇を見事に表現している。
映画中盤で自身が皇居上空で見たというオーロラについて意見を聞くために呼んだ科学者と、座る位置をめぐってドタバタするシーンはあきらかに科学者役の役者とのアドリブであり、侍従長役の佐野史郎が思わず素で笑ってしまったりしている(そのテイクがそのまま使われていることがまたいい)。
そして終盤での皇后役の桃井かおりとのやりとりもおそらくアドリブであり、尾形の芝居にしっかり付いていく桃井の芝居もまた素晴らしかった。
 
ストーリー上での時間の流れが曖昧につくってあって、さっき御前会議したばかりなのにいつのまにか終戦になっていて占領軍が皇居に進駐してきていてと史実よりも空想的な展開になっているが、天皇の人間としての部分を描くというテーマは尾形の絶妙な芝居のおかげだが上手く描かれていると思う。
決して娯楽作品ではないし、日本人としては特別な思いを持って見てしまう作品である。
人によっては評価が極端に分かれるとも思うが、他の人にも観て欲しいなと思える作品ですので機会があれば皆さんにも見ていただきたい。

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