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2012年11月24日 (土)

その経験はきっと糧になる。~J1昇格プレーオフ決勝より~

この試合のCMを電車の中でよく見た。
「日本一残酷な、歓喜の一戦。」
でも、本当にそうだとは私は思わなかった。
それなら、負けて昇格を逃したらチームは解散、などとマスコミに一年中言われ続けていた中での1994年10月23日の川越運動公園陸上競技場でのNTT関東対柏レイソル戦の方がその百倍は残酷な歓喜の一戦であったと思う。
Ca3f0769 煽りは派手だったが、実際の話、昨年のレギュレーションなら惜しいとすら言って貰えなかっただろう順位のチームに、大人の事情でチャンスが貰えたに過ぎない。
そんな今季J2で5位だったジェフ千葉と、6位だった大分トリニータがサッカーの聖地であり、そう遠くない時期に今の姿を消すだろう国立競技場でJ1への最後の切符を賭けた試合に挑んだ。
  
だからと言って、勝者の大分トリニータが、実際はリーグ戦6位だが、昇格に値しないとは思わない。
今季のレギュレーションはこうなのだ。
そのレギュレーション上で勝ち抜いたチームなのだから、その実力を今季のJ2において証明したわけで、真の3位は大分トリニータということだ。
大分トリニータの選手、スタッフ、サポーターのみなさん、おめでとうございます。
 
Ca3f0773 大分は、深刻な財政問題を今もって抱えており、県や地元企業、サポーターらの支援なしにはこの舞台に立つ資格すら得られなかった。
だから、クラブの危機を救ってくれた人達に応えなければいけなかった。
大分トリニータの選手たちは、それに応えた。
もちろん、今日の勝利はその思いに応えるうちの一歩にしか過ぎない。
だが、そういう熱い支援を受けている中での勝利は、クラブの歴史に残る重要な勝利になったと思う。
結局のところ、過去の失敗はどうであれ、生きている限りは前へ進むしかない。
失敗は失敗だとして、それにいつまでも縛られているわけにもいかない。
それをどうこう言われようと、生き残ることで過去を糧にしていくしかない。
それは当事者たちにしかできない。
傍観者は過去ばかりほじくるだろうが、何も創り出せないからそうするのであって、そんな惨めな連中の相手をするほど無意味なことはない。
大分トリニータは、今何をすべきなのかを忠実に実行し、そして成果を出したのだ。
 
決勝点を決めた林丈統はすごく複雑な思いでこの試合に挑んでいたはずだ。
2009年、当時J1の京都パープルサンガの選手だった林は、同じくJ1だった大分トリニータとの第30節での試合でそのシーズンのリーグ戦での唯一のゴールを決めた。
1-1で終ったその試合をもって、大分トリニータはJ2に降格が決定し、以後、昨日に至るまでJ2に属することになった。
そして、対戦相手であるジェフ千葉は彼がプロサッカー選手としてのキャリアをスタートしたクラブ(当時はジェフ市原)であり、2005年をもって退団後、2010年に降格したばかりの古巣ジェフに戻り、J1復帰に力を尽くそうとしながら2シーズン無得点に終わり、戦力外通告を受けたクラブだった。
彼は今でもジェフを愛しているので、この対戦はいやだったと素直に口にしている。
この試合で一番重いものを背負っていたかもしれない林丈統は、この日の千葉がたった一回だけ見せた致命的なスキを見逃さず、そして背負っているものを感じさせないほどに、やわらかな、そして鮮やかな、ふわっと浮かしたボールをGK岡本の頭上に蹴って試合を決めてみせた。
後半41分だった。
そんなことが冷静にできることが悲しいまでに美しく素晴らしかった。
 
Ca3f0771 ジェフ千葉も、自分たちが本来いるべき場所、J1へ戻るために死力を尽くした。
彼らも昨年のレギュレーションなら、昨年同様失敗に終ったであろうシーズンを救われて最後の舞台にあがってきた。
だが、彼らのJ1昇格に賭ける思いは、他のクラブに決して負けないどころか、それ以上だったかもしれない。
佐藤勇人はその思いをずっと熱く語り続けていた。
それはこの試合の奮闘ぶりが証明していた。
まるで鬼神のような姿だった。
Ca3f0791 右サイドの谷澤達也は独特なリズムのプレーを発揮して、序盤の左サイドを攻め上がり続け、ラストパスを出し続けた。
幾度となく痛められたが、危険な位置でのファウルが多く、PKが取れてもというシーンもあった。
右サイドでも米倉恒貴は危険なにおいを出していた。
藤田祥史はなかなか前を向いてボールを扱わせてもらえなかった。
それが誤算ではあり、大分の守備の勝利でもあったが、ワンタッチでさばくだけでチャンスを何度か作り、大分に冷や汗をかかせた。
木山監督は点を取りに来ていた。
荒田智之の投入は、そのメッセージだと思った。
荒田は、よりゴールに近い位置で米倉以上に仕事ができるからだ。
レギュレーションで引分けでもジェフの昇格が決まったのだが、守りには入ってはいなかった。
Ca3f0781 その時点では間違いなくそうだったと思う。
ここまで0-0。
むしろ点を取りたい大分の方が焦っていたはずで、千葉の選手が気持ちが守りに入ったとは思いにくい。
そんな気持ちがあったとしても、荒田投入でどうすべきか伝わったはずなのだ。
が、そんな意思統一のメッセージが出た後半41分直後に見せた、この試合唯一といっていい致命的なスキを突かれてしまった。
 
天国と地獄を決めるような、そんなキャッチコピーの似合う試合じゃなかった。
J’s Goalの中止された企画がそうであったように、当事者たち以外が、ひどく勘違いをして向かえた試合だった。
 
Ca3f0783 ただ、J1昇格への思いだけが詰まっていた。
J1に昇格しても、それが天国ではないことは今季のコンサドーレ札幌が証明している。
でもJ1に上がりたかったのだ。
ただ、そんな思いがぶつかり合っただけの試合だったと思う。
そして勝者と敗者が決まった。
 
レギュレーションを決めた人間はたぶんこの試合が生み出すコントラストの濃さをよくわかっていなかったはずだ。
J2を最後に盛り上げるくらいの軽い気持ちだったかもしれない。
でも、この試合に人生を賭けていた選手が大勢いた。
大分の宮沢正史もそうだった。
村井慎二も、ケガで欠場した永芳卓磨の代役だったが、彼の思いも背負い必死でプレーしたし、古巣千葉も少なからず意識したと思う。
Ca3f0793 そして、昇格を決めながら来季大分でプレーできないことがわかっている選手もいたかもしれない。
千葉にもそういう選手がいただろう。
みんな、ただJ1へ上がりたい。
この試合に勝ちたい。
結局、そういう試合だったと思う。
 
勝者と敗者には別れたが、その共通した思いを込めてこの試合を経験したことは、きっとこの先で糧になる。
千葉ジェッツのブースターさんも何人か、千葉のサポーターとして参戦したようだ。
きっとこの先、千葉ジェッツと共に戦っていく時間できっと糧になると思う。
1994年10月23日の川越運動公園陸上競技場での経験が、今の私の基礎になっているようにね。

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コメント

素晴らしいレビューに感謝いたします。
丁度、私が大分に赴いた年がトリニータ降格の年でした。
大分の人達にとってトリニータは本当に生活の一部だと思います。
ここ数年の経緯もダイレクトに知るところであり、感慨無量です。

投稿: おー | 2012年11月26日 (月) 00時25分

お褒めいただきありがとうございます。
お久しぶりですね。
トリニータが、自分の好きなクラブが好きかだけが大事なんだとあらためて思いました。

投稿: アワン渦帝 | 2012年11月26日 (月) 07時14分

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