ホーム ~8年ぶりのアイアン・メイデン~
9月26日(木)は私にとって待ちに待った日だった。
遡るほぼ一年前にチケットが当選して購入したライブがいよいよ当日を迎えたからだ。
1979年にデビューして以来、ヘヴィメタルという音楽の旗手としてずっと最前線に立ち続けてるアイアン・メイデンの実に8年ぶり14回目の来日公演、その東京公演を観に行った。
場所は有明の東京ガーデンシアター。
8000人ほどのキャパである。
私はアイアン・メイデンのアルバムは出るたびに買ってはいたが、普段の生活もメイデンに染めているファンのような人間ではなく、来日公演も全部行ったわけではなく、記憶は曖昧だが多分4回目だ。
アイアン・メイデンというよりヘヴィメタルという音楽に出会って10から20代に多くの友人を恵んでもらい楽しい時間を過ごさせてもらった人間だ。1980年ごろのことだ。
いろんなバンドのライブにも行ったし、キャッスルドニントンにモンスターズオブロック(1991年)を観にも行った。
私は贅沢な経験をもらった。
年齢を重ね、サッカーやバスケ、演劇など様々なカルチャーにも触れた中で、ヘヴィメタルの比重は私の中では変わっていったが、今でも戻れる「ホーム」という存在ではあり続けている。
10代、20代の頃、夢中になったアーティスト、バンドの多くは活動を休止したり、亡くなったりしたことも無関係ではなく、またヘヴィメタルという音楽も変化していったこともあって、今でも聞いているものはだいぶ少なくなった。新しいバンドを探すこともしなくなった。
でも、アイアン・メイデンは今でもスマホに入れて聞いている。
自分がメタルファンと言い切れるのか微妙になった今でも気合を貰える存在はヘヴィメタルやその祖でもある70年代のハードロックである。
10年通うラーメン店の店主が最近になってロック好きだとわかってからは店にはバンドTを着て食べに行き、Tシャツをネタに会話を楽しんでいる。AC/DCやストーンズの話をしたり、シン・リジイを教えたり。
それは幸せな時間だ。
今回のアイアン・メイデンの来日公演を観て、今あらためて感じている。
自分も歳を取った。今は57歳だ。
アイアン・メイデンのメンバーも歳を取った。
今全員66歳以上だ。ドラムのニコに至っては72だ。
でも、パフォーマンスのパワーとクオリティは初めて観た来日公演(たぶん1987年の武道館)から下がっているとは思えない。
8年前の来日公演(両国国技館)は、記事(下リンク)にもしたし、結構覚えているが、クラシックスから最新のアルバムまでパワーとスタミナの必要な楽曲群を高い完成度で演奏し続けている。
8年前よりステージ上を走り回ることなくなったなとは思ったが、変化はそれくらいだ。
だから来年には結成50周年を迎えるが、我々のようなオールドファンだけでなく、常に新しいファンも世界中で生み出している。
日本にも10代のメイデンのファンがたくさんいる。
彼らにとって今回の来日公演がどれほど待ちに待った、そして人生にとって替えが効かない機会であることはSNSで探せばすぐ実感できる。
4年前にコロナのために中止になり、その機会を奪われた人たちにはなおさらだろう。
チケット代も初めてアイアン・メイデンを観たときから確実に3倍以上になった。
彼らにとって決して楽な金額じゃない。
そのことも今回の来日公演が特別であること、今もそうだが、この先さらにそうなるかもという恐れを考えると、私のようなオールドファンは「ホーム」がいつまでもあるわけじゃないことの噛みしめが甘くてはならない。
そう思う。
貴重な機会になる日本でアイアン・メイデン公演であったが、その体感は1987年のときと変わっていなかった。
ライブについて書きます。
今回のツアー“THE FUTURE PAST WORLD TOUR 2024"はアルバム『Somewhere In Time』(1986)と最新『戦術 - Senjutsu - 』(2021)の2枚からの曲を軸にしたセットリストで構成されている。
既にセットリストがリリースされており、メイデンはツアー中変えないので皆が知って観に来ている。
会場に着いたのは16時半頃、既に東京ガーデンシアターの周囲には大勢のメイデンシャツを着た様々な世代、そして豊かな国際色に彩られていた。
前回の両国国技館公演(2016)でも見られた光景だが、今回はそれ以上で海外からのファンからはワクワクしている感じを受ける。既に飲んでいる人も多い。海外のライブ会場みたいだ。
先に書くと、私は席はアリーナ後方の座席エリア(前方はスタンディング)であったが、一列前は外国からのツーリストが買ったらしく、60~70代と思えるシニア世代のグループも座っていた。
チケットの販売は一年前だったので、日本への旅行にメイデンライブ参戦を組み込んで一年間待っていた可能性がある。
「FEAR OF THE DARK」では縦にジャンプし、拳を突き上げて盛り上がっていて楽しそうで、こちらも楽しくなった。こんな光景が見られるのもアイアン・メイデンだから、と思った。
私は前回買った相撲エディTシャツ(最近ネットニュースで取り上げられて笑った。確かに買ってから着て出かけたことがない)を着て、同じ英国の有名バンドにサインを入れて貰ったことがあるユニオンジャックを羽織って参戦した。
Intro:Doctor Doctor (UFO)→ブレードランナーのテーマ
1 CAUGHT SOMEWHERE IN TIME
2 STRANGER IN A STRANGE LAND
3 WRITING ON THE WALL
4 DAYS OF FUTURE PAST
5 TIME MACHINE
6 THE PRISONER
7 DEATH OF THE CELTS
8 CAN I PLAY WITH MADNESS
9 HEAVEN CAN WAIT
10 ALEXANDER THE GREAT
11 FEAR OF THE DARK
12 IRON MAIDEN
~ENCORE~
13 HELL ON EARTH
14 TROOPER
15 WASTED YEARS
Always Look On the Bright Side of Life (Monty Python)
ライブイントロのUFOの『Doctor Doctor』から観衆の大合唱が始まる。
そして映画「ブレードランナー」のテーマが掛かり、ライトが輝く。
ライブは『CAUGHT SOMEWHERE IN TIME』のイントロが始まり、再び観衆がイントロを大合唱。
そしてメンバーが飛び出してライブは始まった。
前半は最新アルバム『戦術 - Senjutsu - 』を多めに進む。
クラシックな名曲が多いアイアン・メイデンでは新曲中心に進めるセットリストはバンド側にリスクもある。
メイデンの曲は他のバンドの曲より基本長い。
好かれていない曲は観衆を引かせる可能性もあるが、『戦術 - Senjutsu - 』の楽曲群はファンにも好まれている。
若いファンも増え続けているからクラシックな名曲を聴きたがりがちなオールドファンに寄りすぎる必要もない。
それでも『CAN I PLAY WITH MADNESS』のような私年代のど真ん中のメイデンソングは心が沸く。
久々に縦に揺れる床を体感もする。
そしてクラシックもクラシックと思わせないエナジーを今でもバンドが詰め込んで観衆に放っている。
曲が若いままだ。
今年リリースした曲と言われてもわからないくらいだ。
テンポ、キー、パワー共に初めて観たメイデンのライブと遜色がない。
感動、そして私のようなオールドファンには勇気も貰えているような気さえする。
仕事では定年を意識するような歳になっているが、それを意識しているから歳を取るのだというくらい。
久々に聴く『HEAVEN CAN WAIT』
中間部のコーラス部でおなじみの大合唱。
そしてエディが俊敏な巨体で銃を使いこなす。
聴くもの、見るモノ、アイアン・メイデンの楽しさが最高になっていく。
『FEAR OF THE DARK』では印象的なイントロの大合唱が会場に響く。
縦揺れする床。
そして、ヘヴィメタルを象徴する名曲『IRON MAIDEN』が観衆の首を振らす。
あっという間に駆け抜けた。
アンコールでは、メイデン屈指のスピードナンバー『TROOPER』が変わらないスピードとパワーで観衆の残ったスタミナを強制放出させる。
エディが刀を振り回す。
そして8年前と同じく『WASTED YEARS』でライブは大団円を迎えた。
東京だからとリストに無い曲を演るとかなく、逆にだから楽しめるくらいの変わらないパワーとクオリティを見せてくれた。
国内外、いろいろなバンド、アーティストがいて、同じくらいのキャリアでずっと変わらないクオリティを見せてくれる人たちもいくつかいる。日本にもいる。
だが、私たちのようなヘヴィメタルでないと駄目な人たちにはアイアン・メイデンが必要だ。
ようやく初めてのアイアンメイデンを体感できた若い世代のファンの中には、これが最初で最後になるかもとか思う人もいるかもしれないが、不慮がない限りまた観られるよ、きっと。
ずっと変わってないと感じたオールドファンの当てのない戯言だけどね。
もし、不安を感じるなら11月にメイデンと同期と言っていいSAXONが来るから観に行くといい。
ヴォーカルのビフは73だが、今でも彼からもパワーを貰える。
メイデン以上にメタル一直線だから。
当分、ビフは止まらない。
ビフが引退すると言うより前に、メイデンが先に休止するとかないと思うし。
ヘヴィメタルという音楽の持つ力が今思っている遙か高いところに天井があることは感じると思うよ。
ヘヴィメタルはかつて中学生だった私にとって「ホーム」になってくれた。
ヘヴィメタルを聴いていたおかげで多くの仲間、友人に恵まれた。
成就はしなかったが恋愛になりかけたこともある。
アイアン・メイデンもいつかはいなくなるが、アイアン・メイデンから貰った力、絆を大事にできていれば、「ホーム」はいつまでも私たちと共にあるよ。
無くなったように見えてもね。
私がライブ中に羽織っていたユニオンジャックにサインを入れてくれたのは英国のステイタス・クオーのメンバー5人だ。
英国ではかつてチャールズ国王が皇太子時代に観に来たこともあり『英国王室ご用達バンド』なんて呼ばれたこともある。
縦ノリのブギーというスタイルで英国で大人気のバンドだ。今年で結成64年目かな?
1997年に来日したときに、バンドの希望で小さなクラブでも演奏したいと希望があって開催された渋谷のクアトロ(今現在のクアトロとは違う)で入り待ちして貰ったものだ。(ちなみに渋谷公会堂でもライブをしている。)
今は亡くなってしまったメンバーもいるが、クオー大好きだった私には宝物だ。
ザ・フーが2003年だったか、日産スタジアムでのフェス(トリはエアロスミス)に出演した時も持って行った。ザ・フーもユニオンジャックがシンボルみたいなバンドで、ライブで信じられないくらいのユニオンジャックが掲げられている光景に混ざれた感動を忘れていない。
たぶんクオーのライブをもう一度観ることはないと思うが、バンドも観客も汗だくになったあの狭いクアトロでのライブは忘れられない思い出。
十分な体験はさせてもらっている。
この日持って来たのは、この旗もずっと仕舞ったままでは悲しいだろうと思ったからだ。
バンドは違うが同じ英国を代表するロックバンドだ。
旗にも英国の英雄のライブを楽しんでもらえたと思う。
ずっと仕舞われたままじゃかわいそうだったから。
※ライブ画像は会場でアナウンスされたルールに基づいてスマートフォンで撮影しています。
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